不動産市場, 不動産鑑定

平成24年公示地価概況

2012年03月23日

恒例の公示価格が報道されています。
全国と兵庫県の要点を毎回コンパクトにまとめてお知らせしています。
今回もよろしくお願い致します。


○「速報!兵庫県公示価格の概況」


(全国の概況)

平成23年1月以降一年間の地価は全国平均で前年比△2.6%下落した。住宅地は△2.3%(昨年△2.7%)、商業地が△3.1%(△3.8%)であった。いずれも4年連続の下落、2年連続の下落幅縮小であった。東日本大震災直後市場は低迷したが、年の後半頃から被災地を除いて回復傾向に戻った。

被災地の地価は2極化現象が生じ、宮城県石巻市の高台地では移転需要により+60.7%と高騰した地点がある一方、津波被害が甚大であった気仙沼市では△18.3%と下落率が日本一となった。

東京首都圏ではオフィスが需給緩和状態にあり選別化が進んでいる。名古屋圏はマンション需要の好調等から上昇地点が倍増し、底打感も出てきている。大阪圏は上昇地点が139地点(前回2地点)と大幅に増加した。九州地方では昨年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開通効果で、博多駅、鹿児島駅周辺の商業地に上昇・横這い地点が増加した。今回の地価公示は西高東低の結果が出たといわれている。


(兵庫県の概況)

兵庫県内では住宅地が平均△1.1%(昨年△2.0%)、商業地は△2.2%(△3.2%)と4年連続の下落で、下落幅はいずれも縮小した。

住宅地の上昇地点が115地点と全国で愛知県に続き2番目に多かった。住宅地については、芦屋市(+0.4%)と神戸市東灘区(+0.3%)が4年ぶりに上昇に転じた。神戸市垂水区も上昇地点が多く区全体として横這いまで戻った。商業地についてはJR芦屋駅前で県内では4年ぶりに上昇地点が現れた。他方で但馬地域と淡路地域の下落幅は依然大きく、特に津波被害が懸念されるという南あわじ市福良の商業地は県下最大△9.3%の下落となった。

兵庫県内主要都市の地価変動率は次の通りである。

住宅地(昨年)(%) 商業地(昨年)(%)
神 戸 市 △0.7(△1.8)    △1.3(△2.3)
尼 崎 市 △1.1(△2.1)   △1.9(△3.6)
西 宮 市 △0.1(△1.7)    △1.0(△3.5)
芦 屋 市 +0.4 (△0.6)    △0.3 (△2.2)
明 石 市 △0.5(△1.5) △1.9(△3.8)
加古川市 △1.5(△1.6) △1.9(△2.1)
姫 路 市 △1.5(△1.7) △2.0(△1.9)



地価公示(地下工事?)現場の本音話


さて今回は恒例の「半年先の地価予測」はお休みして、地価公示について新聞では語られない本音話等について書きたいと思います。

地価公示は昭和44年制定の地価公示法に基づいて、昭和45年から毎年行われています。現在は全国に26000地点ある標準地の正常価格(適正価格)を公示価格として発表しています。本事業のためのも予算が年々削られております。

公示価格が実勢と異なると揶揄されることもありますが、土地鑑定委員会より委嘱を受けた鑑定士が、分科会における会議の中で、経済統計資料の検討、地域変動の検討、直近の取引事例、エリア内の不動産業者からの取引状況ヒアリング等、出来るだけの資料を収集し、真摯に検討を行って価格を決定していきます。
公示価格は行政機関が発表する価格なので保守的傾向があり過去からの価格推移を引きづりますので、不動産価格が急変する側面では、実態との乖離が生ずることもあり得ると思います。ただこれも裏を返せば公示価格は中期の安定的価格指標としての価値があるということもできるのではないかと思います。

ところで、先に述べました分科会では同じ標準地担当となった鑑定士と意見が合わなかったり、地域単位の大きな価格推移についての合意が形成される中で、自分としては調査を尽くして「もう既に地価は上昇しているだろう」と確信しているのに、多数の意見が主導して「未だ下落傾向」というように、正反対の方向に進む等、専門家としては悔しい思いをすることもあります。

このように地価公示では1つの標準地を終始2人以上の鑑定士で相互チェックしながら公示価格を決定しますので、相続税路線価、固定資産税路線価等いわゆる公的地価の中で一番重要視されています。

公示価格の決定資料に使う取引事例は現在インターネットで一般の方が閲覧可能となっており大変なアクセス数になっているようです。
不動産鑑定士は一年を通してこの取引事例作成に多大の時間をとられていますが、このための報酬は特段頂いておりません。また地価公示作業のための報酬は通常の鑑定報酬の何分の一か程度のもので採算が取れているとはいえません。
それでも全国で2700人の不動産鑑定士が地価公示作業に協力しているのは、40年以上に亘って日本の地価体系を支えてきたその社会的意義に対する思いがあるからだと思います。

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